この二人の3冊目の書である。実はこの本を2冊目の「動乱のインテリジェンス」より早く手にしたため先に読んでしまった。情報の行間を読む手法にはいつも感心してしまう。この書では、いよいよ超大国の米国に明らかな翳りが見えていることを説く。相対的に中国は大国の威信を取り戻そうと必死である。東アジアでの存在感を示すために、尖閣周辺を含めて東シナ海での他国に遠慮なく領海に侵入したり、防空識別圏を強引に設定したりしている。
緊迫する日本を取り巻く国際情勢を手嶋龍・佐藤優氏が解読してみせる。この二人の優れたところは世界の全地域に目が向き、世界の中での日本の位置を解説できることである。インテリジェンス感覚があれば、気にしなければ見過ごしてしまいそうな新聞の記事から国際情勢を読み、これからの動きを予測できることである。この書はその技法のヒントが盛りだくさんである。
ちょっと意外だったのは、東京五輪の2020年開催が、尖閣防衛の盾になるアジアの安全保障問題に大きく影響すると説くことである。個人的には、福島原発事故の影響で2020年の東京五輪開催は可能なのだろうかと危惧しているが、二人は東アジアの平和を先導する祭典にすることで、ロシアと韓国との問題を解決し、中国を平和の祭典に引きずり込めば、いまの強引な中国を止めることができると考えていることである。
さらに、創設された国家安全保障会議(日本版NSC)を肯定的に扱っていることである。鶏が先か卵が先かの問題はあるが、いま器を作ることに反対していない。むしろ、佐藤氏は、「組織が機能するかどうかは、どんな人材をこのポストに充てるのか、総理の器量が試される。」とする。日本の過去のインテリジェンス・オフィサーの血脈やDNAに期待し、手嶋は、「将来を担う人材が在野から育ち、近隣の国々からも尊敬のまなざしを向けられるような国に変革してほしい」と楽観的でいいのだろうかと疑問に思う。
それを差し引いても、十分に示唆に富む書である。次作が楽しみである。
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