前著「日本史の謎は『地形』で解ける」の続編、「地形と気象」からの視点で歴史を見ていく。インフラの世界に生きてきた著者の「文明のモデルのイメージ」の見解は独特であるが、なかなか説得力がある。
曰く、「文明は、下部構造と上部構造(文化)で構成されている。(略)その下部構造(『安全』、『食糧』、『エネルギー』、『交流』)は、地形と気象に立脚している。下部構造がしっかりしていれば、上部構造(文化)は花開いていく。下部構造が衰退すれば、上部構造(文化)も衰退していく。社会の下部構造とは、単なる土木構造物ではない。(略)(歴史の)舞台で演じている役者たちは舞台の制約を受けて芝居を演じていた。いや、舞台の制約そのものが、芝居を規定していた(略)。」
この伝でいくと、現在の日本政府の下部構造(『安全』『食糧』『エネルギー』『交流』)に関するいずれの施策も、地形と気象に立脚しているのだろうかと、非常に不安になってくる。
いずれにしても、以下の「謎」の説明が出色である。
なぜ日本は欧米列国の植民地にならなかったか(第1/2章)
資源・山ばかりの土地・地震・大洪水・湿気の多い気候
命の水道水と大正10年の謎(第3章)
水道水の供給にもかかわらず、乳児死亡率が高かったのに突然V字回復
なぜ江戸は世界最大の都市になれたか(第5/6/7章)
徳川家康を祖とする徳川幕府の治水と21世紀のエネルギー政策への提言
首都に住む人にはわからない首都の機能
貧しい横浜村がなぜ、近代日本の表玄関になれたか(第8章)
江戸時代からの水供給の問題はいかに解決されたか
信長が天下統一目前までいけた本当の理由とは何か(第11章)
戦に弱いことを逆手に取る戦術(チンパンジーの順位争いにそのヒントが)
なぜ日本の国旗は『太陽』の図柄になったか(第14章)
地域の気候がそこに住む人々の考え方にいかに影響を与えるか
なぜ日本人は『もったいない』と思うか(第15章)
モノを捨てることができない、あるいは捨てることに対する罪悪感
ピラミッドはなぜ建設されたか(第17/18章)
治水の方法がナイルデルタと九州の筑後平野のものが共通する
などなど、歴史の謎が新しい視点で次々に興味深く解説される。ぜひ一読をおすすめする。
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